
こんにちは。
タイシン本校の近藤です。
月が綺麗ですね…

明治の文豪・夏目漱石が英語教師をしていた際、生徒が「I love you」を「我君を愛す」と直訳したのに対し、「日本人ならそんな直接的な愛の言葉は使わない。『月が綺麗ですね』とでも訳しておきなさい」と教えたという逸話が元となっている表現です。
漱石の作品や文献にはこの逸話が存在しないため、実際はこのようなことは言っていない…というのが定説となっているようです。
ですが、この言葉への返答には、肯定的なものだけでも「今なら手が届くでしょう」「月が傾く前に会えてよかった」「あなたと見るから綺麗なのです」などいくつもパターンがあるのです!
当然、断る場合も「手が届かないから綺麗なのです」「夜更けには沈んでしまうでしょう」など複数のパターンが…
そして、保留の場合まであるのです!
あくまで伝説であって、事実ではなかった「月が綺麗ですね」という愛の言葉と漱石の逸話…
それが何故、これほど広まったのでしょうか?
きっと、日本人の感性に合った、というのが一番の理由なのでしょう。
ですが、私は、漱石の影響力、漱石の経歴、そして何より、漱石の文学作品の素晴らしさが、ここまで広がった理由だと考えています。
そこで、以前訪れた「漱石山房記念館」について触れたいと思います。

新宿区にある「漱石山房記念館」は、漱石が亡くなるまでの9年間を過ごした「漱石山房」があった敷地に存在しています。
漱石山房は、芥川などの弟子や知人などの文人が多く集うサロンのような様相だったそうです。

※漱石の書斎…ここに文人たちが集った。


※記念館のいたるところに「猫」がいます!
記念館は、漱石山房の再現や様々な出来事の紹介、漱石の自筆原稿、さらにはデスマスクまであります。
とても興味深い展示の数々…
外には「漱石公園」という名の公園があります。
こちらには、旧夏目邸の建物基礎や、『吾輩は猫である』のモデルとなった「福猫」も供養されている「猫の墓」、「道草庵」という資料を展示している建物など、漱石の存在を想像させるものがあります。


このように、様々な見どころのある漱石山房記念館、ぜひ1度行ってみてください。
…と、締めようと思ったのですが、「自筆原稿」を見て興奮していた自分を思い出し、考えることが…
おそらく、現在の作家は皆さんPCを使って執筆活動をされているのでしょう。
これからは、後世に名を残す作家であろうとも、自筆原稿なるものが存在しない、つまり作家自身の痕跡を感じる機会が無くなったということ。
便利にはなったのですが、やはり、寂しいものですね……







