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【代々木校】土方先生より「あじさいの葉の上のかたつむり」

カテゴリ:タイシン代々木校
公開日: 2023年7月10日 10:28
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代々木校の土方です。


梅雨明けも近づいた時期ですが、九州地方など各地で線状降水帯が発生して大雨。

明けるまでもうしばらく時間がかかりそうですね。


梅雨といって連想するのは、あじさいの花と、その葉の上に載っているかたつむり

誰もが思い浮かべる梅雨の風物詩です。

あじさいの時期ももう終わりの時期ですが、私の近所でも多くの家の玄関先や庭などでもまだ咲いています。

体育進学センター代々木校の2つの最寄り駅、小田急線参宮橋では、駅近くの参宮橋公園を囲む花壇にも数本残っていました。

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参宮橋公園のあじさい

もう一つの最寄り駅である京王新線初台の東口(オペラシティ口)を出て、甲州街道の交差点を渡り、吉野家の裏にある緑道でもやはりまだ咲いていました。

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緑道のあじさい


一方、かたつむりですが、その姿を見かける機会が、以前より格段に減ったように思います。

幼いころ毎年梅雨の時期になると、虫や小生物が好きだった私はかたつむりを捕まえてきてはカブトムシやクワガタムシ用の飼育箱に入れて飼っていました。

飼育箱の中を眺めたり、箱から「素手で」取り出して、いろんなところを歩かせたり、角や目をつついたりしてして遊んでいたものです(かたつむり君にとってはいい迷惑だったでしょうね)。

「素手で」、となぜ括弧でくくって書いたのかというと、かたつむりには人体に危害を及ぼす寄生虫(広東住血線虫など)がいることがのちに伝わり、令和時代の親なら幼い子にかたつむりを素手で触らせることはまずないと思うからです。

私の幼少期は昭和40年代後半から50年代初頭ですから、かたつむりをつかんだ手でそのまま3時のおやつを平気でつまんで食べていました。


地球温暖化による環境変化によって、日常の風景の中にある自然=生態系にも気づかないうちに変化が起きています。

当然いるはずの生物の姿が、気がついたら見当たらない。

この季節の、この時期なら当然咲いているはずの花、青々と茂っているはずの草が見えない、という経験はこの十数年で本当に多くなりました。

そのたびに、大きなショックを受けるほど自然生物愛好家でも、環境保護論者でもありませんが、なんともやりきれない一抹のさみしさを覚えます。

一つの生物の種が姿を消すということは、どんなに小さないきものであれ、一つの景色、少し大げさですが、「一つの世界」が消えてしまうことに等しいように思うからです。

また、生物界の生命の営みの輪である食物連鎖を考えれば、消えた生物を捕食して生きてきた他の生物にも大きな影響や、場合によっては生存の危機を与え、やがてその負の連鎖が生物界全体にも広がっていくことだってありえるでしょう。


かたつむりの数が減ってきているのではないか、という私の印象は今に始まったことではなく、10年ほど前からなんとなく感じていましたが、今年の梅雨、庭や玄関先でわずか1,2度ほどしか姿を見ないので、これはいかんな、思いました。

自分と同じ思いを持っている人は多いのではないかと考え、「かたつむり減少」と打ち込み、ネットで調べてみると、案の定、私と同じように感じていた人は多かったのか、KHK大阪のニュース番組では「かたつむり最近見ないのなんでなん」(2023年6月16日)という特集を設け、この問題を取り上げていました。

番組に出演していたかたつむり研究者、滋賀県琵琶湖博物館特別研究員中井克樹先生によると、特に都市部で、かたつむりが激減しているのは確かで、その理由には、

①高度経済成長期以降の宅地開発などにより、かたつむりが好む落ち葉がたくさんあり、高い湿度を保つ土壌の場所が減ってきていること。

②近年環境意識の高まりから、都市部でも緑化計画が推進されているのであるから、かたつむりはそういう「住み良い環境」に移動できればよいはずだが、体の粘液を使って移動するかたつむりは乾燥した地域を越えて移動できないこと(乾いたアスファルトで舗装された道路などを越えていくことは、かたつむりにとって致命的な行為であること。)

③都市化が進み、コンクリートやアスファルトが増えると、風通しが良くなるが、同時に乾燥化を招き、かたつむりが生息しづらくなること、などを挙げていました。

取材調査は関西に限ってということでしたが、関東でも事情は変わらないかと思います。


かたつむりとは、なんとまあ不器用で、適応能力の低くすぎる愚図な生き物なんでしょうか。

これじゃ適者生存の理の中で姿を消してもいくのも仕方ないのかもしれません。 

世知辛い世の中を評して「生き馬の目を抜く」という表現がありますが、現代はそんな古い言葉ではとても形容できない速さで動き、それに適応できないものは衰退していきます。

日ごとその速さは増すばかりで、止まりそうにありません。

それについていけないものは存在自体が害で、それを寛容に扱ったり、しばしの間待ってやることさえも悪いことであるかのように見えるほどです。

そんな世の中で、かたつむりが減っていくのは何か象徴的な現象のように思えます。


先ほどの挙げた中井先生によると、日本には亜種も含めるとなんと約1000もの種類のかたつむりがいるそうです。

それは、かたつむりが、生息する地域環境に合わせて独自の変化を遂げてきた生物であるからこそ、なのだとか。

かたつむりは小さいけれど、各地域=小さな世界の多様性の一端を、のろのろとではあっても担ってきた貴重な存在なのかもしれません。


ここまで書いてきて、はっとあることを思い出しました。

かたつむりを葉の上に載せるあじさいです。

あじさいの花の色は、それが育つ土壌の酸度によって決まると聞いたことがあります。

かたつむりとあじさいは、梅雨という季節でつながるだけでなく、小さな環境と一体となって生き、その場を彩る存在であるという点でも仲間だということです。

そう思うと、いささか紋切り型と見える「あじさいの葉の上のかたつむり」という梅雨の風物詩も、一味ちがう趣をもって見えてきます。

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